タイトルは山口百恵さんの持ち歌から。毎年盛大に甲鶴戦を開催する両校にも、歌い継がれる歌、人々の記憶から次第に消えてゆく歌があるということが、今回のテーマである。百恵さんの歌の歌詞と無関係であることはあらかじめご容赦いただこう。

「鶴丸の校歌=君が代」「甲南の校歌=星条旗よ永遠なれ」

この例えは、南日本放送(MBC)アナウンサーで鶴丸46回卒の岡田祐介さんによる。言いえて妙である。岡田さんはMBCニューズナウのスポーツキャスターとして県内外で取材・レポートするなど、スポーツにも理解があり、担当番組「ズバッと!鹿児島」でも第41回甲鶴戦(平成23=2011年)を特集したことがある。

鶴丸の校歌は歌詞中に一度も校名が出てこないが、五七調文語体で薩摩の風景と土地柄を余すところ無く表し、荘厳な曲調で歌い上げる。作詞者は当時鶴丸高校国語科教諭の中馬幸子さん、作曲者は同じく美術科教諭の郡山正さんで校章もデザインした。

鶴丸には応援歌もある。昭和30年代以降に数曲が誕生したが、いずれも百周年記念時にCD吹き込みがなされた以外は、歌い継がれていないようである。その代わり、80周年記念事業の一環として応援歌製作が企画され、卒業生の作詞・作曲による「蒼天翔る」を採用、これが現在も歌い継がれている(例:対外的には第40回記念甲鶴戦の閉会式後に唄われた)

『創立五十周年記念誌』によれば、甲南の校歌は昭和25(1950)年4月に誕生した。同誌の206ページには「更に甲南高校生としての自覚をたかめるために校歌制定の議が起り、七月十七日校歌制定委員会をつくることになつた。校内外から広く募集するために新聞に広告し、十二月には生徒から十円宛の寄附を求めて、諸経費に充てることにした。二十六年の一月二十九日に投票して優秀作品数篇を残し、生徒の投票も行つて、最後に伊地知正一作詞のものを校歌として決定し、第二回卒業式に間に合うように新保教諭によつて作曲が進められた。」とある。ところが、『甲南高校新聞第18号』(昭和26=1951年12月21日発行)によれば、校歌ではなく「記念祭歌」として製作されたと記されており、食い違っている。記念祭とは現在で言うところの文化祭のようである。

甲南にも応援歌がある。曲名は単に「応援歌」で、昭和31(1956)年に製作された。作詞は当時甲南高校国語科教諭で昭和55(1980)年4月から昭和60(1985)年3月まで甲南高校第11代校長を務めた亀之園重隆さん(鶴丸高校卒)、作曲は同じく音楽科教諭の田中義人さん。

甲南の応援歌については、『創立○○周年記念誌 甲南』・『年誌 甲南』における扱いが酷い。応援歌が製作発表された直後に発行された『五十周年記念誌』には最終ページに歌詞が掲載されているが、八十周年・九十周年・百周年の各号には歌詞すら載っていない(七十周年は白黒写真集)。八十周年時には【昭和五四(一九七九)年度】の項に「二中・二高女・甲南の愛唱歌集レコードが同窓会から発売された。」とあり、百周年時には同じく【昭和五四(一九七九)年度】の項に「~が同窓会から発売された。その際、甲南高校応援歌(田中義人作曲)も日の目を見ることとなる。」と記されているのみである。甲南高校新聞には一度だけ掲載されている

≪付記 甲南側記念誌の概要≫

(1)『五十周年記念誌』(昭和32=1956年)

(2)『甲南 創立八十周年記念特集号』(昭和62=1986年)

(3)『創立百周年記念誌 甲南』(平成19年=2007)

 

(2):昭和32年までの記述は(1)の抜粋。

(3):昭和32年までの記述は(1)の丸写し(一部削除)

          昭和62年までは(2)を一部改変・一部削除。

(小中高校はどこでもそうだが)校歌は、入学式・始業式・終業式・卒業式等、各種学校行事において唄う機会に恵まれている。甲南は百周年を機に体育祭で「校歌合戦」を始めたが、応援歌を唄う機会は今のところ無い。なお、「校歌合戦」は一番を一年、二番を二年、三番を三年が唄うが、これを「応援歌合戦」にしようとするなら、応援歌は二番までなので、工夫が必要である。

応援歌を唄う習慣がある例としては、鹿児島実業高校応援歌(野球の試合では毎度唄われる)、鹿児島商業高校応援歌「錦江湾頭」野球の試合のほか、始業式・講演会等において生徒全員「エビ反り」で唄うようである)などがある。

両校の校歌、応援歌等はいずれも創立記念事業や学校行事の一環で製作された。創立記念事業などでは募金も集められるが、両校は県立であり、県民の血税が投入されている以上、これら歌の数々は、両校の在校生・卒業生だけのものではなく、県民の共有財産とも言える。機会を設け、唄う習慣を作り、大事に歌い継いでゆきたいものである。

リンク

甲南同窓会+サラト(平成18=2006)
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鶴丸36期同窓会+山形屋(平成27=2015)
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